オファーがアクセプトされました

日曜日の夕方にポートランドから戻ったその足で、その日に出た物件を見に行きました。
昼間にオープンハウスをやったにも関わらず、売主さんは私たちが7時過ぎに家を見に行くのを快諾してくれました。着いてみたら、ご本人が家に居てびっくり。素敵なご婦人でした。

「この家を見に来てくれてありがとう。しっかり見てちょうだいね。」とまるで拝むように私達を招き入れてくれました。内部には、もう家具もなく、新しいカーペットが敷き詰められています。壁のペンキも塗りたてで、まだコンセントカバーが付け直されていない部屋もあります。
「この家は、私たちが建てて、37年間住んできたの。たばこは1本も家の中で吸われたことがないのよ」

住宅の売買が盛んなアメリカで、持ち主が変わっていない家というのは稀です。
もちろん築37年の古さはありますが、隅々まで気を配って大切に住んできたことが見て分かります。築年の割りにきれいですねと言うと、「私のドイツ人気質が許さないのよ。」と、誇らしそうに自慢してくれました。

この家で子供を育て、子供達は成人し別に一家を構えています。老夫婦は4寝室の大きな家を手放し、もっと安心できる高齢者専用の住宅地に移るそうです。
「でも、娘が私の家を手放すの、と言って泣いてたわ」と、少し声を落として教えてくれました。
人生の次のステージに向けて、必要なこととは言え、長年住み慣れた家を売るというのは、心の痛みを伴います。

私達に心を許してくれた婦人は、今はもう空っぽになった家のあちらの隅、こちらの壁を指差しながら、「ここには特注のソファが置いてあったの。この壁には季節ごとにキルトを架け替えていたの。お気に入りのソファは、今、倉庫で天井からぶら下がっているんですって。なんてことでしょう!」と解説してくれます。

この家族が、この家を愛し、この家で幸せに暮らしてきたことが、とてもよく分かりました。
家を出る頃には、3人ともこの家を買おうと決めていました。

その夜のうちに、不動産エージェントのリンさんが書類を用意してくれて、先方のエージェントに送りました。自己紹介を兼ねた手紙と私達3人の写真も添えました。その中に、「あなたの家が気に入りました。あなたたち家族が幸福に暮らした家で、私達も幸せに暮らしたいです。」と書き添えました。

昼間のオープンハウスには52人が来たそうです。翌朝までにオファーを出したのは
4組。そのうちの2組は先方の付けた値段で、私達ともう1組が少し大目の金額を提示していたそうです。

こういう場合、この2組で競り合いが始まるのが、今の市況です。
しかし、ご婦人が、私達に売りたい、値段も私たちがつけた値で良いと、決断されたそうです。
月曜日の午後には、私たちが買うことが決まりました。

4月始めに家を探し始めてから、3ヶ月。エージェントが紹介してくれた物件が220軒。実際に見たのが40軒。オファーを出した家が3軒。
なかなか決まらず、もっと時間がかかるかもと覚悟した矢先に、決まりました。

それも24時間以内に。
決まるときは、こんなにもトントンといくのだなあ。
ご縁があったのでしょうね。