2歳児と遊びました。

彼女は今、階段を上ることに夢中です。階段があれば、どこまでも上がっていきます。
私の友人に手を引かれ、どんどん階段を上っていく彼女。私は一番下の段に座って、見上げています。

前を向いて必死に数段上ると、私の方を振り向きます。私は名前を呼びかけて、手を振ります。
それを何度も繰り返しながら、少しずつ高くなっていく彼女。
遠くなっていく彼女への私のリアクションもだんだん大げさになっていきます。

てっぺんに到達した彼女は、くるりと私の方を向きました。
私は、まるで彼女が高い山の頂に昇ってしまい、はるかかなたに姿が見えるかのような気持ちで、「お~い」と呼びかけました。

彼女は、勝ち誇ったような顔で私を見下ろすと、指をさして私の名前を呼びました。

その満足そうな表情は、可愛らしい2歳児のあどけなさではなく、世界を征服した勇者の精悍な顔つきでした。

彼女にとって、とても登り切れないと思えた、目の前の長い階段を登り切り、大人の私がその偉業に対して、尊敬の感嘆を送っているという事実は、とてつもなく大きな成功体験だったのでしょう。

こうした「小さな成功体験」を積み重ねて、子どもは成長していきます。
彼女の満足そうな表情が、階段を上ることで得た自信を物語っていました。

挑戦、達成、賞賛、満足。これが成功体験です。

子どもたちは、遊びを通じて「小さな勝利」を積み重ね、自分にできること、自信を身につけていきます。

今日は、単に階段遊びで最上段まで達成しただけでなく、私という観客をもつことで、心が感動し、「小さな勝利」が「体験」として刻まれました。

私たち大人は、子どもたちが「小さな成功体験」を得るチャンスを多く与えてあげるべきです。
実際、人生は、「大きく成功する」ことは稀で、「小さな成功体験」の集積です。

いつも、お母さんと二人きりで階段を上り下りしていたら、彼女の成功を盛り上げてくれる観客が足りません。
お母さんは、階段から落ちないように手を貸すでしょうし、子どもも手を引いてもらうというサポートがないと、挑戦しないかもしれません。
母子だけの密室育児だと、なかなか「成功体験」を与えることは難しいのかも知れないなとも思いました。

子どもの遊びの周辺に、何をするわけでもない大人が居て、些細な交流が遊び体験をダよりダイナミックなものにしていく。そういう環境が「豊かさ」というものではないでしょうか。